熱海温泉「熱海応援隊」金色夜叉を専門に話すボランティアガイド田中明博さんに、「お宮の松」の前でお話をお伺いしました。

熱海ボランティアガイド 田中明博さん　背景：お宮の松

ボランティアガイド 田中明博さん

田中さんは、ほぼ毎日（雨の日・悪天時を除く）熱海・お宮の松で無償のボランティアガイドをしている。朝9時から午後1時ぐらいまで、熱海を訪れた観光客を相手に「金色夜叉」お宮の松について解説をしてくれる。

観光客の中には「金色」の読みさえ知らない方々も来るので、貫一お宮の像だけを見てしまうと、「DV男と芸者の話」ではと誤解されるかもしれない。そのような状況で、田中さんは原作「金色夜叉」、尾崎紅葉亡きあとお弟子によって書かれた続編「金色夜叉」も読み研究、「正しい知識」を観光客に伝えたいとボランティアガイドをやっています。

※女性「お宮」は、芸姑さんではありません。

貫一お宮の像

許嫁だったお宮、学生の貫一

ほぼ毎日 朝九時から午後一時までいる　手前：お宮の松／奥：貫一お宮像

田中さんについて

横浜で公務員をしていた田中さんは、仕事の休みの日には熱海へよく釣りにやってきていた。海浜公園のある磯釣りの堤防から見る熱海の町は「海〜町〜山の稜線」が美しく、憧れていつか熱海に移り住みたいと思っていた。そんな田中さんに、3度生死の際を体験し、親の介護など事もあり、早期退職し、熱海に移り住んできたそうです。田中さんが熱く語るのは「生かされている」ということを忘れないようにしたい。「生かされている」のだから、自分なりに周りに役に立つことをと、ボランティアガイドをはじめました。移り住んでからおよそ7年、今では「お宮の松」専門の無償ボランティアガイドとして活躍なさっています。地域でも認められ、マスコミの取材も多くうけるようになりました。地元のラジオ局FM熱海湯河原では、ラジオネーム「リチャード・A・田中」で観光情報を提供している。このラジオネームは、大好きな俳優リチャード・ギアから取ったそうです。

観光客へのガイド

近年、とある人が、貫一お宮の像がDV、カップル・夫婦の暴力を助長・肯定してるなどという馬鹿げた意見書を市役所に出しました。その事について、市から「お宮の松」専門家としての田中に意見を求められたそうです。実際に田中さんが観光客と接して、そのように暴力肯定で受け止めるような人はいないと説明しました。おかしな誤解を避けるために丁寧に説明していくことが大切さを訴えています。また田中さんが解説をすると、観光で訪れるカップル・ご夫婦の8割が男性が蹴られるポーズをとるそうです。

おかしな話は他でも出ているそうで、二宮金次郎像が歩きながら本を読むのが「歩きスマホ」のようでケシカランなどという意見もある。前後の文脈と歴史的・時代背景を無視して、表層だけをみて非難するとは無知以外のなにものでもありません。違和感を感じるようなものなら、丁寧に説明して行く必要があります。

金色夜叉 貫一お宮 田中さん

海外からの観光客について

個人客がほとんどのアメリカ・ヨーロッパ系の観光客は「お宮の松」には寄ってこないそうです。来るのは東アジア系の人がほとんど。中国人・韓国人を乗せた観光バスが駐車場に入り、そこから降りてきた観光客が団体が来ます。特に台湾からのお客さんが目立つそうです。理由の一つに田中さんが上げていたのが、太平洋戦争前の台湾における日本教育の影響。90代男性二人組が、お宮の松にやってきて田中さんが流している昔の音楽を聞いて懐かしがったそうです。戦前、日本であった台湾では「金色夜叉」が、日本語教育として教科書に載っていました。その影響からでしょう、台湾では1963年と1997年の二回映像化もされています。また、台湾大学日本語学科では舞台発表なども行われているようです。台湾の人にとっては、日本を代表する身近な小説の一つなのでしょう。

「お宮の松」の話をすると、観光客からそれ以外の質問も受けます。その中で田中さんがよく受ける質問が、下記の2つです。

観光客からの質問TOP2

1位　オススメの海鮮丼の店はどこですか？

→釣り好きの田中さん魚に関してはちょっと一家言あります。観光のお客さんには、丁寧にオススメをお答えしています。

2位　熱海駅はどうやって行けばいいですか？

→朝、宿から歩いてやってきたお客さん。前日は、宿の迎えの車で移動しているので駅までの行程がわからないそうです。

田中さんオススメ記念写真

「貫一お宮の像」はあくまでもサブ、「お宮の松」がメイン。また「貫一お宮の像」は午前中に撮影するとどうしても逆光になってしまうので、「お宮の松」の正面に立ってもらいつつ、サイドに「貫一お宮の像」を置いて一緒に撮る！これが田中さんオススメの「お宮の松」記念撮影です。

お宮の松 オススメの記念撮影

※注意

田中さんの話には終わりがありません。もし急ぐ方は事前に何分くらい時間があるかお伝えしておきましょう。一通りガイドを話すと30分かかるそうで、ロングコースだと45分以上も話します。私は、実際にそこまでお聞きしてないのですが、金色夜叉の流れから話の舞台は熱海をはなれ全国に広がるそうです^^;

田中明博（リチャード・A・田中）さんの活動

「金色夜叉」著・尾崎紅葉

まとめ

年明けの休日、観光客へのガイドの合間のお忙しい時でしたが、快くお話いたけました。本当にお話が好きな方で、取材にも快く受けていただき、ありがとうございました。

原作「金色夜叉」こちらからどうぞ↓↓↓

こちらの本、単なる原文から現代語訳だけでなく、読み進める上でのコラムの掲載されています。読みやすいと評判なので、原文に手をだす前にこちら読み始めるのがいいかもです。