【映画】ベトナムロケハンの魅力と目的

映画制作において、ロケーション選びは作品の世界観を大きく左右する重要な要素です。近年、東南アジア諸国の中でもベトナムがロケ地として注目を集めています。豊かな自然や文化的背景、歴史を感じさせる建造物、急速に近代化が進む都市風景など、多面的な魅力が凝縮されているからです。

たとえば、フランス植民地時代の名残をとどめる建築が残るホーチミン市(旧サイゴン)や、首都ハノイの湖畔に広がる市街地は、独特の雰囲気を醸し出しており、さまざまな映画作品で印象的なシーンが撮影されてきました。また、ダナン近郊の豊かなビーチリゾートや、ホイアンの古い街並み、サパの段々畑など、場所によってまったく異なる表情を見せてくれます。これらのバリエーション豊かな風景を作品の舞台として活用することで、観客に鮮やかな映像体験を提供できる可能性が高まります。

とはいえ、ロケハンを目的にベトナムを訪れる際には、旅行者としての視点だけでなく、撮影許可や治安、現地での移動、費用管理など、多岐にわたる注意事項を把握することが不可欠です。本稿では、映画考察ブログに掲載する体裁を想定し、ベトナムへの基本的な渡航の流れから、現地での治安、通貨、交通手段、観光、食事、さらには撮影上の注意点などを広範囲にわたってまとめます。初めてベトナムを訪れる方にもわかりやすいよう配慮しつつ、映画制作の観点からも参考になる情報を盛り込みますので、ぜひ最後までご覧ください。

スポンサーリンク
レクタングル(大)

1. ベトナム渡航の基本的な流れ

1-1. 渡航前の準備

ビザの取得・パスポートの有効期限

  • ビザ要否の確認
    日本国籍の場合、観光目的で15日以内の滞在であればビザが免除されるケースがあります。ただし、細かい条件や申請手続きが変更されることがあるので、最新情報を外務省や在日ベトナム大使館の公式サイトで必ず確認しましょう。
    ロケハンで滞在が長期になる場合や、撮影業務そのものを行う場合、ビザ免除ではなく業務用のビザが必要となる可能性があります。その際は、適切なビザを取得することが重要です。
  • パスポートの有効期限
    一般的に、入国時点でパスポートの残存有効期間が6か月以上あることが望ましいとされています。ロケハンで長期滞在を計画している場合は、特に余裕を持った期間を確保しておきましょう。

航空券とスケジュールの調整

  • 直行便と経由便
    日本からベトナムへのフライトは、東京(羽田・成田)、大阪(関西国際空港)からホーチミン市(タンソンニャット国際空港)やハノイ(ノイバイ国際空港)への直行便が運航されています。直行便で約5〜6時間ほどのフライトです。
    航空券を手配する際は、撮影の下見に必要な日数やロケ地候補を考慮して、目的地に近い空港へアクセスしやすい便を選ぶと効率的です。
  • 撮影許可や取材許可の事前取得
    映画やCMなどの撮影を行うには、ベトナム側の関連機関や省庁、またはローカルの制作会社を通じた許可申請が必要になる場合があります。ロケハンの段階であれば必須ではないものの、正式な撮影段階を見据えてどのような手続きが必要になるかを把握しておくと、後々スムーズです。

1-2. 現地到着からの流れ

入国審査

  • 入国カードの記入
    ベトナム入国時には入国カードの提出が必要な場合もありますが、空港に到着した段階で書類が配布されることが多いため、機内で入国カードが配られなかった場合は到着ゲート付近で入手します。必要事項(滞在先、職業、ベトナムでの連絡先など)を正確に記入しましょう。
  • 税関申告
    高額の現金や機材、ドローンなど、申告が必要となる持ち込み品がある場合は、事前に確認したうえで税関申告を行います。撮影機材の持ち込みに関しては、別途許可が求められるケースもありますので注意が必要です。

両替とSIMカードの購入

  • 両替所とATM
    国際空港には両替所やATMが設置されているので、ある程度の現金(ベトナムドン)を入手しておくと便利です。両替所によってレートが異なる場合があるため、複数を比較してから両替するのも一手です。ただし、大きなレート差はあまりないことが多いです。
  • SIMカード・モバイルWi-Fiの確保
    空港内のキャリアブースや市内の携帯ショップでSIMカードが購入できます。短期観光用のプリペイドSIMは、通話やデータプランが含まれるプランが多く、数日〜1か月単位で使えるものがあります。ロケハン中に現地スタッフとの連絡やインターネットを頻繁に使う予定があれば、SIMカードやポケットWi-Fiを早めに手配しておきましょう。

2. ベトナムの治安事情

2-1. ベトナムの一般的な治安レベル

東南アジアの中でもベトナムは比較的治安が良いとされていますが、スリや置き引き、ひったくりなどの軽犯罪は都市部を中心に起こりやすいです。特に観光客が多いエリアでは、カバンをひったくられる、スマホをバイクから奪われるといった事件が報告されています。

2-2. 注意すべきエリアとポイント

  • ホーチミン市(旧サイゴン)
    1区や3区など中心地には観光客が多いため、スリが発生しやすいです。夜間に徒歩で移動する際は、人気の少ない路地を避け、タクシーや配車アプリを利用すると安全です。
    バイクタクシー(バイタク)を利用する際は、正規のアプリ(Grabなど)を使うことで比較的安心できますが、ヘルメットを必ず着用しましょう。
  • ハノイ
    ホーチミン市と同様、旧市街など人通りの多い観光地周辺ではスリや置き引きに注意が必要です。首都であるため警察の巡回も多く、治安は比較的維持されていますが、観光客目当ての詐欺やぼったくりなどには気をつけましょう。
  • ダナン、ホイアン
    観光地として人気が高まり治安は悪くないと言われています。ただし、ビーチやナイトマーケットなど、大勢が集まる場所では所持品管理を徹底してください。

2-3. 犯罪回避のための心得

  • 貴重品はホテルのセーフティボックスに預ける
    ロケハン中、パスポートなどの貴重品を常に持ち歩くのはリスクが大きいです。撮影や下見が中心であれば、必要最低限の現金とカードだけ携行し、パスポートは安全な場所に保管するのが安心です。
  • 夜間の移動に注意
    深夜帯のタクシー選びや人通りの少ないエリアには十分注意しましょう。タクシーは大手のVinasunやMai Linhを選ぶのが一般的に安全です。
  • 荷物を身体の前に
    バイクでのひったくりが増えているため、ショルダーバッグやカメラバッグは身体の前で抱えるように持ち、道路の車線側に荷物を向けないようにすると被害に遭うリスクを下げられます。

3. 通貨と支払い方法:ベトナムドンを中心に

3-1. ベトナムドン(VND)の基礎知識

  • 紙幣の種類
    ベトナムドンには多くの種類の紙幣が存在し、 500,000ドン、200,000ドン、100,000ドン、50,000ドン、20,000ドン、10,000ドン、5,000ドン、2,000ドン、1,000ドンなど、細かく分かれています。色味が似ている紙幣もあるため、慣れるまでは額面をしっかり確認しましょう。撮影時の小道具としても興味深いデザインですが、取り扱いには注意が必要です。
  • 換算の目安
    レートは変動しますが、概ね1円=約170〜200ドン前後(2025年初頭の想定例)と言われています。例えば、100,000ドンは日本円で500円前後といった目安です。

3-2. 支払い方法と注意点

  • 現金(ベトナムドン)
    ローカル食堂や市場、タクシーなどでは現金払いがメインです。ロケハン中はこまめに必要な小額紙幣を用意しておくと便利です。
  • クレジットカード・デビットカード
    大型ホテルやレストラン、ショッピングモールなどではクレジットカードも広く受け入れられています。ただし、カードのスキミング被害などのリスクも完全には排除できないため、利用時にはレジの前でカードの扱いを確認し、不審なスキャナー機器がないかチェックしましょう。
  • 電子決済・QRコード決済
    GrabPayやMoMoなど、ベトナム国内独自のモバイル決済システムも普及しつつあります。ただし、外国人旅行者の場合、現地の銀行口座が必要なケースもあるため、すぐに導入するのは難しいこともあります。

4. ベトナムの交通手段

4-1. タクシー

  • 正規タクシーとアプリ配車
    前述のVinasunやMai Linhなど、大手タクシー会社を利用するのが比較的安全です。メーターがしっかり作動していることを確認しましょう。
    また、Grabなどのライドシェアアプリは料金が明確で、場所指定もアプリ上で行えるため、言語の問題があっても比較的スムーズに目的地へ到着できます。

4-2. バイクタクシー(バイタク)

  • ローカル感のある交通手段
    ベトナムではバイクが圧倒的に普及しているため、バイクタクシーは街中を走る手軽な移動手段です。料金交渉が必要な場合が多いですが、GrabBikeのようにアプリを介して利用する場合は料金が事前に確定するので便利です。
  • ヘルメット着用の徹底
    交通事故のリスクを下げるためにもヘルメット着用は必須です。ロケハンで各地を回る際は安全第一を心がけましょう。

4-3. 鉄道・バス

  • 長距離移動に鉄道を活用
    ハノイ〜ホーチミン間を結ぶ南北線(統一鉄道)は、ベトナムの風景をゆったりと楽しめる交通手段として観光客にも人気があります。ロケーション撮影の下見という目的で、沿線の風景を下調べしたい場合などに利用すると、現地の空気感を味わいつつ効率的に移動ができます。ただし、遅延が発生しやすいため、スケジュールに余裕をもって利用することが望ましいです。
  • 市内バス・ローカルバス
    運賃は非常に安価ですが、言語の壁や複雑な路線図、車内でのスリなどのリスクがあるため、初めての旅行者には少しハードルが高いかもしれません。ロケハンの効率を重視するなら、バスは補助的に使う程度が無難でしょう。

5. 主要観光地とロケハンに活かせるスポット

5-1. ホーチミン市(南部)

  • ベンタイン市場
    観光客向けの市場であり、多種多様な商品が並んでいます。撮影シーンとしても活気ある雰囲気を演出しやすいですが、価格交渉が必要な場合が多いため、相場観を持って臨むことが重要です。
  • 聖母マリア教会(サイゴン大聖堂)と中央郵便局
    フランス植民地時代の名残をとどめた建築物。ヨーロッパ風の外観はベトナムというアジアの土地にあって異国情緒を醸し出すため、作品のシーン転換などに使いやすいロケーションです。
  • ホーチミン市人民委員会庁舎
    夜間のライトアップが美しく、映画やドラマでも夜景シーンに重宝されます。周囲には高級ホテルやブランドショップが立ち並び、近代的な街並みとの対比が面白いエリアです。

5-2. ハノイ(北部)

  • 旧市街(ホアンキエム湖周辺)
    迷路のように狭い道が入り組む旧市街は、バイクや人でごった返す熱気があり、エネルギッシュな街の姿を映し出すには最適です。週末は歩行者天国となり、多くの露店やパフォーマンスが開かれます。
  • 文廟(ヴァンミュー)
    ベトナム最古の大学とも言われる歴史的建造物群。荘厳な雰囲気を活かしたシーン撮影に適しています。
  • ハロン湾(ハノイからアクセス)
    世界遺産に登録された美しい湾で、多くの奇岩や小島が浮かぶ独特の景観は圧巻です。船上からの撮影や洞窟の探索など、映像作品としても壮大なスケールを演出できます。

5-3. ダナン・ホイアン(中部)

  • ミーケービーチ(ダナン)
    白い砂浜と美しい海が広がるビーチリゾートエリア。近年は高級リゾートホテルも多く進出しているため、リゾート映画やCM撮影にも使えるロケーションです。
  • ホイアン旧市街
    歴史的な交易都市の面影を残す、黄色い壁とランタンが特徴の街並み。特に夜になるとランタンが灯り、幻想的な風景になります。観光客で賑わう一方、路地裏は静かな時が流れ、両方の空気感を作品に反映させることが可能です。

5-4. サパ(北西部)

  • 段々畑と少数民族の集落
    山岳地帯に広がる壮大な段々畑は、絵画のような景観を生み出します。日本の棚田とはまた違うエキゾチックな雰囲気があり、自然を舞台にした作品やドキュメンタリーなどでは特に魅力を発揮します。

6. ベトナムの食事文化:ロケ中の食事で気をつけたいこと

6-1. ベトナム料理の基礎

  • フォー(Phở)
    ベトナムを代表する米粉麺スープ。牛肉入り(フォーボー)や鶏肉入り(フォーガー)などバリエーションが豊富です。あっさりした味わいが特徴で、ロケハンの合間に手軽に食べられるのも魅力です。
  • バインミー(Bánh Mì)
    フランスパンにパテや野菜、肉などを挟んだサンドイッチ。屋台や小さな店でも手軽に買えるため、ロケハン中の朝食や昼食にぴったりです。
  • 春巻き(Gỏi Cuốn / Nem Rán)
    生春巻きや揚げ春巻きなど、地域や店によって具材や味付けが異なります。パクチーが苦手な人は事前に抜いてもらうことも可能です。

6-2. 食事の衛生面と注意点

  • 屋台での食事
    ベトナムの屋台飯は安価で美味しいですが、衛生管理が行き届いていない場合があります。生野菜の扱いなど気になる点があれば、注文を控える、もしくは信用できるお店を探すと安心です。
  • 氷入りドリンク
    氷が不衛生な水で作られているケースもあるため、観光客は避ける傾向にあります。ただし、大手カフェチェーンやレストランでは衛生的な氷を使っている可能性が高いので、状況に応じて判断すると良いでしょう。
  • 水道水は飲まない
    ベトナムの水道水はそのまま飲むのに適していないため、ミネラルウォーターを常に携帯しておきましょう。

7. 映画ロケハンにおける具体的な注意点

7-1. 撮影許可の取得

ロケハン時点では大掛かりな撮影をしないにせよ、将来的に撮影を実施する場合は事前にベトナム文化・スポーツ・観光省や関連機関から許可を得る必要がある場合があります。大都市ではフィルムコミッションや現地の制作会社と連携できることもあるので、早めに相談しておきましょう。

7-2. ドローン撮影の注意点

ベトナムではドローンの撮影に制限があり、無許可で飛行させると違法になる可能性があります。軍事関連施設の近くや公共施設の上空は厳しく取り締まられることがあるため、必ず現地の法律を確認し、必要に応じて許可を取得してください。

7-3. 機材持ち込み

カメラ機材や照明など大規模な装備を持ち込む場合は、税関での申告が必要となる場合があります。また、トラブル防止のため、機材リストを英語またはベトナム語で準備しておくとスムーズです。

7-4. 現地スタッフの手配

大規模な撮影を想定するなら、現地のコーディネーターや通訳、照明・音声スタッフなどを雇う場合があります。英語が通じるスタッフも増えてきていますが、細かいニュアンスを伝えるためには日本語が話せるスタッフを探すか、信頼できる通訳を用意すると良いでしょう。

7-5. ロケハン時の効率化

  • 移動スケジュールの最適化
    交通の渋滞が激しい都市部では、時間帯によっては大幅に移動時間が増加することがあります。ラッシュ時を避けたり、移動ルートを工夫したりすることで効率良く複数のロケ地を回れます。
  • 気候条件の把握
    ベトナムは南北に長く、地域によって雨季と乾季の時期が異なります。ロケハン前に気候情報を調べ、撮影に適した季節や時間帯を把握しておきましょう。

8. まとめ:安全と効率を確保し、魅力を最大限に活用するために

ベトナムは多様な自然と文化が共存し、映画制作のロケ地として大きな可能性を秘めています。フランス植民地時代の建築が残る街並みから、急速に発展する近代都市、さらに山岳地帯や世界遺産の湾まで、作品のテーマやジャンルに合わせたロケーションを柔軟に見つけることができるでしょう。

一方で、スリやひったくりといった軽犯罪、撮影許可の取得、機材の搬入など、トラブルを未然に防ぐための対策も不可欠です。安全面ではタクシーやGrabなどの信用できる移動手段を選び、常に所持品管理を徹底することが重要となります。文化面では、現地の食事や生活習慣に慣れることで、よりスムーズなコミュニケーションが図れます。

ロケハンにおいては、限られた日程で効果的に複数の候補地を回る必要があるため、事前のリサーチと現地スタッフの選定が鍵を握ります。現地の制作会社やフィルムコミッション、コーディネーター、通訳など、信頼できるパートナーを得ることで、トラブル対応や撮影許可取得、機材管理などを円滑に進められます。

本稿で紹介した情報は、ベトナムへの初渡航の際に役立つ基礎的なものであり、時期や情勢の変化によっては最新情報を随時確認することが不可欠です。撮影の内容や規模によっては、追加の許可や手続きが必要となる場合もあります。現地政府の公式サイトやベトナム大使館、旅行代理店などから更新情報を入手し、安全かつスムーズにロケハンを実施できるよう万全を期しましょう。

映画制作においては、ロケーションが語る物語は非常に大きい要素となります。ベトナムがもつ多彩な風景と文化的魅力を最大限に活かすためにも、下見を通じてしっかりと土地勘を養い、スタッフとの連携や撮影許可の準備を整えておくことが成功への近道です。そして何より、安全第一でロケハンを楽しみながら、作品の未来像を思い描いていただければ幸いです。

スポンサーリンク
レクタングル(大)