【熱海】熱海がテレビ番組に頻繁に登場する5つの理由

はじめに

近年、テレビをつけると全国ネットの情報番組やバラエティー、旅番組などで熱海を目にする機会が増えたと感じる方は多いのではないでしょうか。静岡県東部に位置する熱海市は、古くから温泉地として有名でありながら、バブル崩壊後の観光不振や大型施設の閉鎖など、決して平坦とはいえない道を歩んできました。それでもここ数年、さまざまな報道や番組企画で盛んに取り上げられ、人々の関心を集めています。

実際に、2020年代に入ってからも多くのテレビ番組で熱海の街歩きや観光スポットが紹介され、SNS上でも「熱海に行ってみたい」「こんなに元気な場所だとは思わなかった」といったポジティブな声が増えています。なぜこれほどまでに熱海の露出が増え、そしてテレビに取り上げられ続けているのでしょうか。

本稿では、WEB上の情報や地元の観光協会の発信、さらにはテレビ番組の編成意図などを最大限に調べ上げたうえで、その理由を5つに集約して考察します。ただし、これら5つの理由は互いに独立したものではなく、複合的に影響し合っている点に注意が必要です。さまざまな因果関係や文脈が絡み合うことで、熱海が今まさに「テレビで取り上げるに値する場所」として確立しているのです。

以下、それぞれの理由を述べる前に、熱海という街の概況やテレビメディアとのつながりの概論的背景に触れてから、本題の5つの理由へと話を進めます。

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第1章:熱海という街の概況

1.1 熱海市の基本情報

熱海市は静岡県の東部に位置し、東京から新幹線で約40分とアクセスがしやすい温泉観光地として全国的に知られています。市の面積は約61.78平方キロメートル(2023年時点)であり、太平洋に面して温暖な気候と豊富な湯量を誇る温泉が特徴です。その歴史は古く、奈良時代にはすでに温泉地として存在していたという記録もあります。江戸時代になると徳川家康をはじめとする歴代将軍が湯治に訪れたというエピソードも残され、明治・大正期以降は別荘地としてさらに知名度を高めました。

昭和から平成初期にかけては、日本の高度成長期やバブル景気に伴い、熱海のホテルや旅館は大きく発展を遂げました。しかし、バブル崩壊後の景気後退やレジャーの多様化、海外旅行の普及などの要因によって、熱海の観光客数は一時大きく落ち込みました。大型ホテルの倒産や施設の老朽化など、厳しい時期が続いたのも事実です。

1.2 バブル崩壊後の再生

とはいえ、熱海は「再生」の道を多く歩んできました。行政や観光協会、地元の事業者、さらには若い世代の起業家などが一体となり、さまざまな新規事業や街づくり計画を打ち出してきたのです。たとえば、廃墟同然になっていたホテルをリノベーションしたブティックホテルの開業や、古い商店街の空き店舗を活用したカフェ・ギャラリーのオープンなどが挙げられます。

また、海や山の自然環境や歴史的建造物、昭和レトロな雰囲気を「他にはない魅力」と捉え直し、観光客向けに磨き上げる試みも行われてきました。これらの再生プロジェクトが徐々に成果を上げるにつれ、熱海は「昔ながらの温泉街」だけではない、多面的な観光資源を持つ場所として復権を遂げつつあります。

1.3 テレビメディアとのつながり

熱海はもともと、昭和期の数々の映画やテレビドラマの舞台、あるいは有名人の別荘地として取り上げられることがしばしばありました。芸能人が番組内で「熱海に家を持っている」と語るエピソードも、かつては視聴者の関心を集めました。そうした歴史的背景もあり、テレビ制作サイドからすると「ロケ地として使いやすい」「視聴者に馴染みがある」というメリットが長年存在していたといえます。

さらに近年は、全国ネットの情報バラエティー番組や地域活性化を題材にしたドキュメンタリーなどが、熱海を舞台に続々と企画を行っています。こうした動きは、地方創生ブームとも相まって、熱海がテレビの番組企画に取り上げられる回数をより一層増やしているのです。

第2章:熱海がテレビに頻出する5つの理由

ここからが本稿の中心的テーマとなります。これまでの概要や背景を踏まえつつ、「なぜ熱海がテレビ番組でこんなに取り上げられるのか」を5つの理由に絞って解説していきます。もちろん、実際にはこれら5つの要因以外にも多彩な要素が存在しますし、互いに連動している複合的な現象です。しかし、論点を明確にするために、あえて5つの主要ポイントとして整理してみます。

理由1:再開発と街の再生ストーリーへの注目度が高まっている

まず挙げられるのが、熱海自身が進めてきた再開発やリノベーションが大きな成果をあげ、その「再生ストーリー」がテレビ映えするという点です。

2.1.1 テレビ的に“起承転結”が描きやすい

テレビ番組、とりわけバラエティーや情報番組は「わかりやすいドラマ性」を好みます。熱海の場合、バブル期の隆盛から一転して観光客離れに苦しんだ過去があり、その後に地元企業や住民、自治体が連携して復興を進めた歴史があります。これは番組として非常に取り上げやすい構成要素です。

  • 過去の栄華(バブル期)
  • 低迷期(バブル崩壊後)
  • 再生への取り組み(近年のリノベーションやイベント)
  • 結果(観光客の増加やメディア露出の増大)

このストーリーは、視聴者にとって「頑張っている街」「もう一度復活してほしい街」としての親近感や応援したい気持ちを誘発し、番組の視聴率アップにも寄与します。

2.1.2 新旧の融合がもたらす視覚的インパクト

熱海の街には、昭和の香りが残る商店街や老舗旅館といった“レトロ感”と、新しく生まれ変わったブティックホテルやカフェ、モダンなデザインの高層マンションなど、“最先端の建築・文化”が混在します。画面上で新旧が交錯する風景は、視聴者の好奇心をかき立てるため、特集コーナーやロケ映像でも頻繁に使われるわけです。

理由2:アクセスの良さがロケ地として魅力的

2つ目の理由として、東京から新幹線や電車で約40〜50分というアクセスの良さが、テレビ番組制作の大きな後押しになっている点が挙げられます。

2.2.1 撮影クルーの移動コストと時間短縮

テレビ局の多くは東京に拠点を置いています。そのため、地方ロケとなると制作側には交通費や日程調整など、さまざまなコストと手間がかかります。熱海の場合は新幹線を使えばあっという間に現地入りできるため、日帰りロケも十分可能です。

  • 撮影クルーの宿泊費を節約できる
  • 長期にわたる大がかりな撮影でなくても、サクッと撮影をこなしやすい
  • タレントや出演者のスケジュール調整が容易

番組制作費の圧縮や短い撮影スケジュールにも対応できる点で、熱海のアクセスの良さは非常に魅力的です。

2.2.2 “都会から少し離れた非日常感”の演出

東京から近いとはいえ、やはり熱海は海と山に囲まれたリゾート地であり、都会とは風景や雰囲気が大きく異なります。視聴者にとっても「ちょっと足を伸ばせば行ける非日常空間」としての説得力が強いため、番組サイドとしては「週末のプチ旅行」や「日帰り観光」の提案をしやすいわけです。結果として、視聴者の“行ってみたい欲”を刺激しやすくなります。

理由3:多彩なコンテンツ(温泉、海鮮、花火、歴史など)の豊富さ

3つ目に挙げるのは、熱海が抱える観光コンテンツの多彩さです。温泉はもちろんのこと、海鮮グルメや歴史的建造物、花火大会など、番組で紹介しやすい要素が数多く存在します。

2.3.1 温泉文化の深さ

熱海といえば、やはり「温泉」。日本屈指の湧出量を誇り、源泉数も豊富です。大浴場や露天風呂から、風情のある老舗旅館まで、その種類はさまざま。タレントが温泉を楽しむシーンは視聴者にとっても分かりやすく、“癒やし”や“贅沢感”といったキーワードを演出するのに最適です。

2.3.2 グルメと食文化

豊かな海に面している熱海では、海鮮グルメが多彩に楽しめます。地元漁港で水揚げされる新鮮な魚介類や干物、金目鯛の煮付けなどは、旅番組やグルメ番組の定番ネタです。また、商店街には老舗の干物店や和菓子店などが並び、街歩きのロケ企画として撮れ高を確保しやすい環境が整っています。

2.3.3 レジャー・イベントの充実

熱海海上花火大会は、全国的にも有名な花火イベントの一つです。夏だけでなく春や秋、冬にも定期的に開催されるため、一年を通して「花火大会レポート」や「熱海の魅力と花火のコラボレーション」が放送されることもしばしばあります。観光地としてはイベント数が多いほうが取材を受けやすくなるため、熱海の季節ごとのイベントは番組企画にマッチしやすいといえます。

理由4:地域とメディアの連携強化

4つ目の理由として、地域側が積極的にメディアと連携し、情報発信や番組企画の誘致を行っている点が挙げられます。

2.4.1 行政・観光協会の広報戦略

近年、熱海市や観光協会はデジタルマーケティングやSNS、各種メディアとのコラボレーションに力を注いでいます。具体的には、PR映像を制作してYouTubeなどで発信したり、インフルエンサーを招いた視察ツアーを行ったり、テレビ局に対してもロケハンをスムーズに進めるためのサポートを積極的に提供しています。こうした動きによって、テレビ番組側は企画の立ち上げが容易となり、結果として熱海の露出が増えるのです。

2.4.2 テレビ局との“ウィンウィン”の関係

番組制作会社やテレビ局にとっても、地域の観光協会や自治体が取り組む誘致施策は大きな助けになります。たとえば、ロケ地選定や許可申請のサポート、現地での案内、地元の有力者の紹介など、スムーズな制作進行に欠かせない要素を地域側が提供してくれるわけです。これにより、通常ならロケ地を探すだけでも苦労する地方番組の企画が、短期間でまとまりやすくなるのです。

理由5:コロナ禍以降の国内旅行需要と“映える”要素

最後の理由として、2020年前後から世界的に大きな変化が起きた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に言及しないわけにはいきません。海外旅行が制限される中で国内旅行需要が高まったため、近場で非日常を味わえる熱海はさらに注目を集めるようになりました。

2.5.1 国内旅行ブームとの相乗効果

コロナ禍における外出自粛要請や海外旅行の制限に伴い、日本人の多くが「国内旅行なら比較的安心」「短期間の旅なら行きやすい」という考えを持つようになりました。熱海は前述の通りアクセスも良く、多彩な観光要素があるため、この国内旅行ブームに乗って再び脚光を浴びます。テレビ局としても、視聴者が関心を寄せる「国内の観光地」特集を組む際に、熱海は外せない存在になったのです。

2.5.2 “映えスポット”の急増

SNS時代においては、「映える写真」「映えるロケーション」が観光地選びの重要な基準となっています。熱海はインスタ映えや動画映えするスポットを積極的にリノベーションしたり、新規オープンさせたりしており、こうした景観や施設はテレビでも目を引きます。タレントが訪れることで話題を呼び、SNSでも拡散されるという好循環が生まれています。

第3章:地域と映像メディアの関係を一段高い視野から考察

これまで述べてきた5つの理由を単に「テレビに熱海が出てくるから嬉しいね」で終わらせるのではなく、より高い視点から総合的に考えてみると、地域と映像メディアの関係性が浮き彫りになります。以下では、地域と映像産業がどのように相互作用を起こし、どのようなメリットと課題を抱えているかについて掘り下げます。

3.1 地域ブランディングとメディアの影響力

テレビというマスメディアは、依然として大きな影響力を持ちます。一度番組で特集されれば、全国的に瞬時に情報が広まるため、地域ブランディングにとっては非常に有効な手段となります。熱海のように観光資源が豊富な地域にとって、テレビ露出は経済効果やイメージアップを期待できる絶好のチャンスとなります。

しかし、一時的なブームに終わらないためには、露出の連続性とともに地域住民や観光施設側の受け入れ体制が重要です。番組放送後に一気に人が押し寄せても、満足のいくサービスや情報が提供できなければ、リピーターを生み出すことは難しくなります。

3.2 地域の課題発見と解決へのステップ

テレビで取り上げられることによって、外からの目線で地域の問題点や改善点が浮き彫りになることもあります。たとえば、老朽化したインフラや対応しきれない宿泊施設の問題などがクローズアップされることで、行政や地元事業者が課題に気づき、解決に向けた取り組みを加速させるきっかけとなります。

実際に、熱海でも大型施設の老朽化や海岸の環境保全などが番組を通じて注目され、さまざまな支援策や寄付金の募集などが盛り上がった事例があります。「テレビに取り上げられる→一時的な注目→課題認識→改善策の実行→新たな魅力の創造」というサイクルが回ることで、街の活性化を図れるわけです。

3.3 “観光地”から“暮らしの場”への目線

観光地としての熱海ばかりが注目されがちですが、実際にはそこに暮らす住民がいます。メディアによる取材が増えることは、観光客増加による経済効果と同時に、生活環境への影響ももたらします。混雑による交通渋滞やゴミ問題、宿泊施設不足など、地域住民にとっては必ずしもプラスだけではない局面もあるのです。

そのため、番組制作側や行政、地元企業が連携し、観光客と住民がうまく共存できる環境づくりを考えていくことが重要になります。テレビがきっかけで街に興味を持ち、実際に移住を検討する人も出てくるかもしれませんが、そこでも受け入れ体制や地域コミュニティとの調和が必要となるでしょう。

3.4 サステナブルな観光モデルの追求

今日ではサステナビリティ(持続可能性)が世界的なキーワードとなっています。観光地が短期的なブームに頼るだけでなく、環境を保護しつつ、地域経済を長期的に維持発展させるモデルが求められています。熱海は豊かな自然環境と長い歴史を有する土地ですから、テレビでのPRが成功した結果、観光過多による環境破壊や文化継承の断絶といった事態を防ぐためにも、サステナブルな観光開発の視点が不可欠です。

第4章:今後の展望

今後も熱海がテレビに登場する機会は続くと考えられます。特に、新型コロナウイルスの影響が徐々に落ち着き、人々の外出機会が増えてくると、再び「近場で非日常を楽しめる観光地」としての需要がさらに高まるでしょう。

また、国際観光の観点から見ても、東京オリンピック・パラリンピックや大阪万博などの世界的なイベントを契機に、海外からの旅行者が再び増加する可能性もあります。熱海は富士山観光へのゲートウェイのひとつでもあるため、訪日外国人向けの特集なども増えることが予想されます。

第5章:まとめ

ここまで、熱海が近年テレビにしばしば登場する5つの理由を整理し、それらがどのように地域とメディア双方にメリットをもたらしているのかを述べてきました。改めて5つのポイントをまとめると、以下のようになります。

  1. 再開発と街の再生ストーリーがテレビ的な“ドラマ性”を持っている
  2. 東京からのアクセスの良さがロケ地選定を容易にする
  3. 温泉、海鮮、花火、歴史など多彩なコンテンツが番組を豊かにする
  4. 地域とメディアの連携強化で番組制作がスムーズになる
  5. コロナ禍以降の国内旅行需要とSNS映え要素が重なり、一気に注目度が上昇

これらの要因は相互に補完し合い、熱海という街がテレビで取り上げられる機会を増幅させています。さらに、その背景には地域活性化を目指す行政・事業者・住民の努力があり、テレビ局にとっても視聴率やスポンサーからの評価に直結する“おいしい題材”であるという現実が存在します。

一方で、地域にとってはテレビ露出によって多くの観光客を呼び込むことができる半面、オーバーツーリズムや生活環境への影響などのリスクを伴うことも忘れてはなりません。今後、熱海がさらに多様なメディアで取り上げられ続けるのであれば、その恩恵を地域全体の成長や持続可能なまちづくりにつなげるビジョンが求められます。

最後に、熱海の事例は「一度は衰退した観光地が、再び脚光を浴びるまでのプロセス」としても非常に示唆に富んでいます。他の地域もまた、その街ならではの個性を磨き上げ、メディアとの連携を深めることで、同様の成功を収める可能性があるのです。熱海の今後の動向を見守ることは、地域創生や観光戦略、さらにはテレビをはじめとするマスメディアのあり方を考えるうえでも貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

おわりに

熱海がテレビに頻繁に登場する理由を5つに絞って考察してきましたが、実際にはさらに多角的な要因が存在します。人々のライフスタイルの変化、インバウンド観光の再開、地域ブランド力の向上など、熱海を取り巻く環境は刻一刻と変化しています。

しかし、いずれの流れを俯瞰してみても、熱海が持つ歴史、地理的条件、そして地元の方々の努力が、テレビによる街のイメージ向上や観光振興に直接的な影響を与えているのは間違いありません。今後も多くの番組が熱海を舞台に、いろいろなテーマで取り上げていくことでしょう。その過程で、観光客として訪れる視聴者側と、地域の暮らしを守る住民側の双方にとって、持続可能で魅力的な街づくりがさらに進展していくことを期待したいところです。

このように、熱海の事例は「テレビ番組で何度も何度も取り上げられる」という現象を単なるブームとせず、地域の再生と未来のあり方を映し出す鏡として捉える視点を与えてくれます。ぜひ、次にテレビで熱海の特集を見かけた際には、映像の奥にある背景や、番組制作側と地域側の利害がどのように交錯しているのかにも思いを馳せてみてください。

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