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1.「黒の深淵」を求めて
映画制作という現場において、「黒」は単なる色ではない。それは、世界の輪郭を消し去る闇であり、光を際立たせる余白であり、観客の想像力に働きかける“間”である。
たとえば、黒い背景が白い衣装を際立たせるように。あるいは、漆黒の闇から一歩踏み出す主人公の姿に、観客の呼吸が止まるように。
そんな「黒」に、限界まで挑んだ塗料がある。その名も──真・黒色無双(しん・こくしょくむそう)。
光陽オリエントジャパンが製造するこの水性アクリル塗料は、「世界一黒い水性塗料」として注目され、模型業界のみならず、舞台・映像・インスタレーション・写真・科学研究の分野でも使用が広がっている。
本記事ではこの「真・黒色無双」の基本的な特徴と、その応用として、映画制作現場でどう活かせるのかという実践的視点からの考察を行う。
2.真・黒色無双とは何か?
◆ 世界一黒い水性塗料
「真・黒色無双」は、従来の「黒色無双」から進化した環境対応型塗料である。可視光の反射率は約0.6%〜0.8%。これは、反射光がほとんど人の目に届かないレベルの黒であることを意味している。
通常の黒塗料(たとえば市販のつや消しブラック)は反射率が10%〜15%前後だが、真・黒色無双はその1/10以下。黒というより、“光を吸い込む穴”のような質感が得られる。
◆ 水性アクリル系で使いやすい
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匂いが少なく、室内作業でも扱いやすい。
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水で希釈可能。
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筆塗り、エアブラシ両対応。
また、REACH・RoHSといった欧州の環境規制に対応している点も特徴で、プロユースとしても信頼性が高い。
3.映画制作の現場における活用法
◆ なぜ“黒”が重要か?
まず、映画制作現場において「黒」という色がもつ意味を再確認したい。単なる色味ではなく、視覚設計の要(かなめ)である。
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クロマキー(グリーンバック)の補助として、背景を意図的に黒く消し込む。
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フレーム外の反射を避けるための遮光。
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登場人物の心理状態を象徴的に示すための“闇”。
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特殊撮影におけるオブジェクトの「消失」表現。
このように、「黒」は映画の視覚表現における空間の制御装置なのである。
では、真・黒色無双がその表現にどのような革命をもたらすのか。以下、現場別に見ていこう。
【シーン①】“存在を消す”ための舞台道具に
たとえば、舞台美術で小道具を「見せたくない」場合。
──たとえば、宙に浮かぶように見せたいオブジェクト。
──たとえば、舞台裏に手を入れる操演機構。
──たとえば、人形劇の黒子の衣装。
こうした「視界から存在を消したい」道具に、真・黒色無双は圧倒的な効果を発揮する。
● 使用例:浮遊マスク演出(ホラー)
被写体の後ろに真・黒色無双を塗った台座を設置し、映像では台座が完全に“沈み込む”ため、マスクだけが浮いて見える効果が得られる。
【シーン②】ミニチュア/特撮での背景処理
特撮映像で重要なのが、「スケール感」と「奥行き」。特にミニチュア撮影では、背景を完全に沈めることで、ミニチュアを実際の建物のように見せる必要がある。
● 使用例:背景処理における黒の活用
ミニチュアの背後に塗布した“黒色無双パネル”を使えば、奥行きのある闇を演出でき、浮き上がるような陰影が生まれる。
これは従来のつや消し黒では実現し得なかった「漆黒の奥行き」であり、まさに特撮ファン垂涎の一手。
【シーン③】プロップ(小道具)作成
例えば劇中に登場する“謎の装置”や“禁断の書物”など、小道具を造形する際に、「異物感」「不気味さ」「実体のなさ」を演出したいことがある。
真・黒色無双を使えば、その表面が**一切の光を返さない“ブラックホール的質感”**になり、観客の視覚と心理に強烈な印象を与える。
● 使用例:黒いオルゴール/禁書の表紙
小道具の表面に真・黒色無双を塗布 → 観客は“何も映らない不穏な物体”として認識 → 不安感や緊張を演出。
【シーン④】撮影機材への応用
実は、真・黒色無双は映画機材自体の反射防止にも有効だ。たとえば:
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レンズフードの内側
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カメラリグの遮光パネル
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モニターフードの内壁
こうしたパーツに塗布することで、わずかな光の漏れや反射を吸収し、クリアな映像が得られる。
これはプロカメラマンや照明部にとって、ディテールを制御するための重要な技術となるだろう。
4.取り扱い上の注意と実践アドバイス
とはいえ、真・黒色無双は万能ではない。いくつかの「注意点」が存在する。
◆ 弱点1:耐久性に乏しい
「触ると剥がれる」「粉が出る」といった報告が多く、摩耗に弱いことは否定できない。
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可動部や人が頻繁に触れる場所には不向き
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コーティング剤の使用は非推奨(黒の深度が損なわれる)
したがって、使用場所は選ぶ必要がある。
◆ 弱点2:コストが高い
100mlで2,700円前後と、一般塗料に比べて高価。だがこれは“演出装置”として捉えれば納得できる金額でもある。
5.「黒で語る」未来の映画演出
私たちは映像の中で、「光」にばかり注目しがちだ。しかし、実は「黒」のコントロールこそが、光の表現を最大化する。
真・黒色無双のような製品は、そのための映像技術としての革新であり、インディーズや自主映画の現場においても手の届く“魔法”である。
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低予算でも印象的な美術セットを作る
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少人数でも工夫で空間演出を補う
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SNS映えするビジュアルで、バズを狙う
そういった現場にこそ、「真・黒色無双」の力は活きる。
6.まとめ:映画は“黒”で決まる
「真・黒色無双」は単なる塗料ではない。それは、空間と印象をデザインする道具であり、「ないものを在るように見せる」ことが求められる映画制作の現場において、ひとつの革命的な選択肢である。
最後にひとこと。
光を演出する者は、同時に闇を制御せねばならない。
真・黒色無双は、その闇を自在に操るための「最強の黒」なのだ。
🔧補足情報リンク
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商品ページ(Amazon)
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メーカー公式サイト(光陽オリエントジャパン)
https://koyo-orient.co.jp/