【寄稿】劇評「犬鳴村〜恐怖演劇〜」

9月8〜15日に、上野の古民家「市田邸」にて公演した

恐怖演劇〜犬鳴村〜

【舞台】9月にホラーな芝居「犬鳴村」を公演します。
今回は、お仕事の告知です。 きっと暑さもおさまりきらないだろう9月中旬に上野・御徒町で、ホラーな舞台を公演します。自分は、プロデューサーと...

無事に公演が終了。友人から劇評いただいたので転載いたします。

「とにかく、家のムードに驚いた!最初にあの家の門をくぐった時、まず目に入ったのが家を取り巻く木々だ。よく整備された日本庭園の松の木たちは、ぐんにゃりとした形が多く、家と並ぶと、さながら、手塚治虫に出てくる日本家屋の様だ。無論、そんないい庭なのだから、劇で使わないはずが無い。劇では庭まで広く使ったまさに、360度奥ゆく有りのパフォーマンスだった!その巨大セットから、放たれる異様な雰囲気は、劇とは裏腹だ。序盤は、まだ何かを匂わせる程度、少し展開が進むと、効果的なジョーズの様な音響…と共にアリサが叫ぶ、

『あ、ここ電波無いじゃん!』

ここでは、見ているお客さんたちが、早速、ホラー開始かよ!と、驚かされる。最初の方は全体的にコメディ仕立てとなっていて部屋も明るい。コメディは、ホラーの鉄板だ!特に、電波の下りはとても面白く、お客さんの緊張感も演出家に指示されたようだった!ただ、序盤の20分程の中には、コメディを少し無理してやっていると感じたシーンも多々あった。例えば、ウミという髪の短い女の子がゴリラ、ゴリラとからかわれ、自分の胸板を大いに叩くシーンがある。だが、そこに至るまで、その女の子の容姿や、口調からは、これと言ったゴリラの要素は見当たらない…。ゴリラ=力持ちなどの連想もさせたが、連想の労力もむなしく、伏線的な要素は一切含まれていなかった、ということや、猟師が、みんなの置きっ放しの放置バッグを、盗み取るシーンなども、伏線の回収が、何らされておらず疑問の残る結果となっていた。

そんな数ある疑問の中でも、特に疑問なのはこれだ! お鍋の肉の中身は⁈ これは、きっと、見ていた人が、みんな思うであろう、疑問だ。あのグツグツと音を立てて調理されていた熊肉⁇だという料理…。 グツグツなっていた鍋を、止めなかったという理由だけで、髪の毛を激しく引っ張られた、あの料理…。一日目の晩は、驚く程、美味しかったあの料理…。たくさんの思い出が詰まったあの料理だが、一体、あれは、何の肉なのだろう。見終えた後、いろいろ考えた末、以下の三つを候補に挙げてみた。

① おん婆の熊との死闘の上の熊肉

② 今まで何人も来ていた女子の肉

③ 漁師さんのはらわた肉

是非、これは、どの回答が合っているのか答え合せをしてみたい、楽しい疑問だ・・・!

次は、演者さん方に物申します!まず、アリサがメチャメチャ可愛かった!着ている服が二日目になってミニスカにチェンジしているところなども、とても良かった!そして、ウミの演技がとても上手かった!特に、住所をおん婆に何度も聞くシーンが、当人の焦りと不安が直で伝わって来て面白かった!あと、おん婆役のよしこさんが、舞台挨拶で、声が出なくて困ったという話をしていたが、実際、ワッと人を驚かさねばいけないところで第一声の声が出ていなかったのが勿体無かった。しかし、腰が悪そうだった、おん婆が、包丁を持った途端、鬼婆と化し、すごい速く走るシーンなど、夢に出てきそうなほど、躍動感豊かで、凄まじかった!
猟師のキャラが勿体無かった!これは、公演後の舞台挨拶で個人的に感じたことだが、猟師の演者さんからは、怖いオーラよりも優しい系統のオーラの方が、滲み出ていた。そのせいか、劇中では、猟師のキャラであるはずの、クセのある頑固おじいちゃんという設定に、演者として完全にハマりきれていないようにも見えた。

音響さんが主役!音響さんか、演出さんの意図してやったのだと、思うが、何度も同じ音を使い回しで流しているシーンが、非常に多く、そのほとんどが、結果として、マイナスに働いているように感じた。音響は、本来、意図したシーン以外は、堂々と主役に立ってはいけない存在…。つまり、お客さんの集中力をそれを意図しない場面で、削ぐようなことはしてはいけないはず。例えば、セミの鳴いていたワンシーン、セミの一鳴きが、終わるごとに、また同じ物を、繰り返される。これでは、きっと見ているお客さんたちが、何度も、かかる同じ音に、だんだん、飽きてしまうだろう。変なタイミングで途切れてもいいから、せめて、一本の長いセミの音にして欲しかった!

実は、一年程前、恐怖演劇を見た事がある。そこで観た恐怖演劇は、はっきり言って、内容を殆ど覚えていない。恐怖演劇だというのに、怖かった唯一のシーンは、ただれた顔の女の人が「恨めしや〜」と出てくるところだ。そんな、誰に対しても効く脅かしで、恐怖を煽って来た。今回も恐怖演劇と聞いて、同じ事を連想した。「恐怖演劇とは?」とすら、思った。然し、この『犬鳴村』は、違った。舞台を家を使ってやってみよう!お化けは、メイクと血のりでいこう!…舞台にかける本気たや、新しい風を必死に吹かそうとするが劇に出ていた!」

2017年9月20日 鈴木灯智(とうち)

鈴木さん、劇評ありがとうございました。

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

場面写真 犬鳴村

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