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アニメで地域・企業を活性化させるには
コンテンツ事業創造HUBさん/株式会社聖地会議さん主催のイベント コンテンツツーリズム ビジネスセミナー「アニメで地域・企業を活性化させるには」に行って来た。
前編はこちらになります → 【聖地巡礼】コンテンツ×旅 JTBの挑戦。 前編
今回は、後編になります。
2015年より内閣府・地域活性化伝道師としても活動している株式会社JTBコミュニケーションデザイン / JTBピクチャーズマネージャー古関和典さんの実際の事例紹介の後半からになります。
前半の事例は
事例1 ベトナムの旅行番組(中部地方)
事例2 アプリ 東京ロケたび(東京都)
事例3 映画「テルマエ・ロマエ」(全国の温泉宿)
事例4 映画「ジヌよさらば」(福島県柳津町)
事例5 上海・台湾 クールジャパンPR(埼玉県秩父市・千葉県鴨川市)
でした。
事例6 銀の匙×北海道・十勝
【コンテンツ×物産 映画「銀の匙」×北海道・十勝】
マンガ原作の「銀の匙」、アニメが先行して放送され話題になり、その後に実写化で映画になった作品。この実写化を機に、ロケ地めぐりで観光客ががどっと来るようになる。お客さんが来たときに、地域にその流れが還元する仕組みとして物産を買ってもらおうという施策を試みた。
単にロケ地巡りだけでなく、物産を買ってもらう仕組み
「銀の匙」公開記念・十勝帯広物産展開催/帯広市の特産市開催
その他、ロケ地マップの制作・配布/オリジナルロケツアー開催/関連グッズ開発
物語が農業高校を舞台としたものなので、農林水産省・文部科学省とコラボレーションをしている。
農林水産省関連では、タイアップポスター制作/タイアップ広告掲載/試写会実施
文科省では、全国の農業高校で体験入学を促すポスターを制作
コンテンツの持つ特色を最大限発揮できるところと組むことによって、より効果的な宣伝を目指す。PRの基本ですね。
事例7 アニメ「花咲くいろは」× 衛星!?
聖地巡礼で多くのファンが訪れている湯涌温泉の新たな企画として立ち上げたのが準天頂衛星「みちびき」とのコラボツアー開催。2010年にHⅡロケットによって打ち上げられた準天頂衛星「みちびき」今までの衛星ではGPSの精度数十メートルの誤差だったのが、この「みちびき」は日本の真上に飛んでおり精度を誤差数メートルまでアップさせている。今後はさらにバージョンアップし、数十センチまで精度アップを目指すという。その衛星と、アニメ「花咲くいろは」がコラボしての企画である。目的の一つとしては、政府による衛星の認知向上がある。
湯涌温泉で行われるアニメの中の神事「ぼんぼり祭り」とのスペシャルツアー。コラボで行ったことは、ARを活用したアプリで街歩きをしてもらう。このアプリ用にキャラクターボイスを録り下ろしをして、ファンの参加意欲を掻き立てる。ARのシステムには、GPS機能は不可欠であり、まさに準天頂衛星「みちびき」の機能を活用したイベントとなっている。
「花いろ旅あるき」アプリ→ http://www.hana-tabi.jp/about_app.html
ツアー参加しなくても聖地巡礼はできるのだが、参加者には様々な特典がある。「ぼんぼり祭り」会場への貸し切り移動、イベントのセット販売、オリジナルツアーキット付き、などなど。ツアーに参加しないと手に入らないレア感満載のツアーです。
事例7「弱虫ペダル」×熊本県
熊本県に観光客誘客のための企画劇場版アニメ「弱虫ペダル」を企画した。地震前の企画だったのだが、アニメのファンは震災にみまわれた熊本に来てくれた。実際に読んだのは、被害の少ない熊本市内や天草地域。旅行商品を販売したら、多くのファンが買ったくれた。そこで感じたのは、コンテンツツーリズムは災害には強いのかもの。東日本大震災以降、復興の支援の一つの方法として観光が根付いている。
旅行商品以外の企画では、映画の中でてくる地元熊本グルメ。それをPRする企画を展開。
関連URL http://rurubu.travel/theme/area/local15/15a1164/
旅行商品「劇場版弱虫ペダルの舞台・熊本!アニメオリジナルグッズ付期間限定プラン」
アニメの聖地巡礼のする際に、グルメは重要。時に食べ歩きてきるB級グルメは地域観光にとってはもってこいの商品と言える。
事例7 映画×スポーツ×温泉
映画「疾風ロンド」×ウィンタースポーツ×野沢温泉 のコラボ。
映画「疾風ロンド」は、野沢温泉が舞台ということもあり当然そことコラボ。さらにスキーが重要なファクターなのでスキー場とタッグを組むだけでなく、スポーツ庁ともコラボレーション。全国の高校に、スキーをしましょう!ウィンタースポーツをしましょう!というポスターを貼らせてもらっている。スキー人口の減少が叫ばれるな中、高校生たちにスキーにふれてもらう機会創出にはよいかもしれません。ウィンタースポーツ人口が減れば、オリンピックのメダルなどにも影響がでるでしょうから、そうした宣伝に力を入れているものと思われます。
その他、JTBの旅雑誌に紹介したり、JTB店舗にも掲載。交通広告に出稿している。
関連サイト http://www.jtbcom.co.jp/news/2016/11/post-29.html
事例紹介は以上になり、今後の展開の一つを紹介
社団法人 アニメツーリズム協会
さらになる挑戦ということで、社団法人アニメツーリズム協会についてお話をなされました。
官民あげて、聖地巡礼を盛り上げていこうという団体。理事にJTBの方も参加されている。協会の役割は、地域に深く入っていくというよりは、オールジャパンをまとめて海外に展開していく役割ではないかと古関さんは語っておられました。確かに、海外展開していくとしたら、個々で対応していくには色々とハードルが多いと思うので、協会がまとめてサポートしてくれるといいのかもしれません。
古関氏×柿崎氏
古関さんの話が終わり、セミナーの参加者からの質問受付をしながら柿崎さんを交えてのトークになりました。色々と話がでましたので、ざっとピックアップして記しておきます。
・聖地巡礼でコンテンツがブームになったタイミングで、地域に一過性でお客が集まる。流行っている時はいいけれども、その後をどうするかが一番大切なこと。そのムーブメントをどう長続きさせるかが重要になる。
・対策の方法として。ロケ地ツアーを開催。コンテンツと地元の食とつなげる。
・一回来た人に、土地の魅力(場所・食・物産など)をどうつたえるかが大切。ちゃんと魅力が伝われば、コンテンツに関係なくリピーターになってくれる。
・+αで紹介していく必要がある。このαは、体験であると思う。
・「ジヌよさらば」の事例を紹介。撮影で使用したバスは、町に寄贈。バスは、撮影用にデザインしたもの。
・地域は映画を誘致する際に、自分たちのところに映画がロケに来たときに制作費用が抑えられるメリットを伝える。
・一方コンテンツ制作側は、地域にある一定度権利を譲渡するなどして、地域のメリットを用意する必要がある。
・聖地巡礼で地域で問題がでることが必ずある。例えば、地域として来てほしくない場所がある。その時は、撮影チームなり制作チームに事前に伝える必要がある。
・実例としては、アニメ「この世界の片隅に」では聖地巡礼で来るファンが地元の迷惑になっているケースがある。
・聖地巡礼の成功で、地域の住民の応援は不可欠。「ジヌよさらば」では、柳津町2000人の町民が応援しているのを感じた。
・聖地巡礼で成功に必要なこと。地元にこのコンテンツを活用してやろうという人が必要。「ジヌよさらば」柳津町の旅館の社長が熱い人だった。コンテンツホルダーに熱い思いを伝えていく必要がある。
・聖地巡礼は、どう権利処理していくかにかかっている。
・古い作品でも、丁寧に権利処理をクリアできれば新たな観光資源として発掘できる。
・インバウンドでコンテンツツーリズムに来る人は、二回目以降の観光客。一回目は、東京や京都など有名なところをまわる。二回目以降に新たな発見として聖地巡礼を旅の目的にしている。
他にも多くの方から質問が飛び、熱い話が聞くことができました。
柿崎さんと古関さんとのお話は、こちら「聖地会議13」にさらに深く語られているので興味あるかたは、手にとってみてはいかがでしょうか?
参考:JTBPicturesの活動図
古関さんの説明の中で、JTBピクチャーズの図をあげていました。
国内メディアに向けては、国内・海外ロケのアレンジ・コンサルタント
国内自治体・観光地に向けては、ロケ誘致コンサルタント
海外観光局・観光地に向けては、ロケ情報収集・現物提供依頼
海外メディアに向けては、日本からの売り込み(営業活動)、ロケの予定情報の早期収取
横の繋がりのマッチングにおいては、国内メディアと国内自治体・観光地及び外国観光局・観光地
海外メディアと国内自治体・観光地とのマッチング
まとめ
古関さんのお話は、大変参考になりました。ここに書ききれないものも沢山あります。コンテンツホルダー(制作者側)と地域(観光協会・企業)との間に立ち、ビジネスとして成立させながら前進している様子が伺えました。聖地巡礼を語る時に必ず立ちふさがってくるのが、権利をどうクリアにしていくかという問題。できたら制作段階から制作者たちと地域がダッグを組んでwin-winの関係を築いていくのがよさそうです。地域として聖地巡礼に期待しすぎないことも大切な気がします。テレビアニメに関していうと、年間200本近く制作されていますが実際に大ヒットするのは数本なのが実情です。コンテンツ制作者側は、何本も同時につくっているので全部ホームランの必要がありません。しかし、地域としてはその一本に賭けるとなると博打になりますよね。そのことに関して、担当者は関係各所・地域住民に説明し向き合っていくのかが悩ましいところです。成功したケースのやり方が、ほかのケースにも必ずしも当てはまりません。ですが、過去の成功ケースは参考にはなるので、学びの材料にすることは不可欠です。
参考・関連サイト
聖地会議→ http://www.seichi-kaigi.com
JTB「旅する映画」→ http://www.jtb.co.jp/kaigai_fit/contents/travelcinemas/
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