【熱海】ATAMI2030会議に出席してきた-後編-

Contents

前編はこちら→「【熱海】ATAMI2030会議に出席してきた前編

熱海の2030年への提言をさぐる有識者会議

「ATAMI2030会議」

四回目となる会が、2016年11月24日(木)に行われました。その時の模様を自分なりにまとめてご報告します。全部の網羅はできませんので、自分なりの主観が入って取捨選択されていることをご了承いただければと。あと若干話しの流れが飛び飛びになっております。

atami2030-04-02

100名ほど参加

スポンサーリンク
レクタングル(大)

テーマは「福祉と健康」

それに関連する熱海及び近隣の市町村の事業者さんたちによるプレゼンテーションが会の前半に行われました。「福祉と健康」は、高齢化社会の日本において最重要課題であり、多くの人たちが解決への向け取り組んでいる。

課題のあるところに、ビジネスあり

後半の会議に向かう前に、休憩時間がおよそ10分ありました。その間に、熱海で推奨している「湯楽YOU楽(ゆらゆら)体操」が市の方の指導の元、みんなで体験をさせていただきました。このような体操は、日本全国の自治体で行わているのですが、どれだけ効果があるのか疑問です。確かに、毎日おこなうと老化予防に効果があるのは確かなんでしょうが。。。。

湯楽YOU楽(ゆらゆら)体操

坂の多い熱海独自の体操として平成21年に作られたのが「湯楽YOU楽体操」。ひざや腰の痛みを和らげながら、熱海の坂道を上り下りするための力をつけて、いつまでも、はつらつと、楽しく生きてもらいたいとの想いを込めて作成しました。 熱海市役所ホームページより http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=586

YouTubeにもアップされていますので、ぜひご興味あるかたは体験してみたください。 YouTube「湯楽YOU楽(ゆらゆら)体操」

で、後半戦スタート

登壇したのは、

下関市保健部長 福本怜(ふくもとさとし)さん

最初は医者でしたが、厚生労働省に入省。金勘定するのが嫌だと面接官に行ったら、逆に保健費に関する部署にまわされたそうです。その後、長野県佐久にある介護医療の病院を経て、現在の下関に至っています。

介護医療に関するエキスパートです。

福本さんが今回の話で掲げるテーマが「生き生きとした、持続可能で、健康的な地域を取り戻す」

「生き生きとした、持続可能で、健康的な地域を取り戻す」

「生き生きとした」いいですね、いつまでもそうありたいです。
「持続可能で」対処療法的な対応だと持続できなくて、意味がなくなります
「健康的な地域を取り戻す」健康的ってのは、本当に難しいですよね。

では「健康」ってなんでしょうか?福本さんが問いてきました。

健康とは?

健康の定義について WHO憲章では、その前文の中で「健康」について、次のように定義しています。 Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)

肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態!

先日、WHOが一人もので恋人もいない成人は健康的でないと発表していたニュースがWEB上に流れてきていました。肉体的、精神的、社会的に完全な良好な状態とたしかに言えないなと、この場で思い出してしまいました。ニュースソースのリンクも貼っておきます。

参照:Telegraph

Single men will get the right to start a family under new definition of infertility

で、福本さんが続けて問います。

「健康」もまた価値観の一つです。
絶対な評価指標ではない。
健康であることを他人に押し付けることはできません。

しかし、健康的な暮らしについて考え、議論することは非常に有用です!

健康とは倫理的な問題であります。

私達は健康でいることが当たり前のような気がします。しかし、それが絶対視されて他人に強要される世の中になったとすると、これはデストピアになってしまうと、ある小説を思い出しました。夭逝の天才SF作家・伊藤計劃氏の「ハーモニー」です。  

権力によって健康であることが絶対視された世界で、若き女性が葛藤して生き抜くデストピアSFの傑作です。健康が強要されると、タバコは絶対禁止、酒もダメでしょう、一日10キロ歩くことを強要され、きっと食べ物もすべて管理され好きなものも食べれなくなることでしょう。考えただけでも息苦しい、嫌な世の中です。健康至上主義がデストピアだなと、福本さんの言葉で再認識することができました。 故に健康は強要することはできないものの・・・

倫理的な問題として議論され啓蒙

して行く必要のある議題であるのは大切なことです。そして健康的な生活を送っていく上で、必要な要素として

「優しさ」「思いやり」

をあげられていました。この2つなくして人の暮らしはなりたたない。 「優しさ」「思いやり」で地域の活動にボランティアとして参加することは大変素晴らしいことですが、持続可能な社会にするためにはボランティアだけではなりたたないと強く掲げておられました。

被災地での介護認定の急上昇

ある数字が示されました。被災地では災害時以降に要介護認定率が急激に上昇しました。災害に合うと、当然カラダが不健康な状態に陥りますが、心も同様に不健康な状態になります。健康だった人も介護状態に陥ってしまう確率が高くなってくるのです。

そこで被災地で行った、ある施策をしたそうです。

被災地で体育館で避難している人たちは、仕事も家も失って何もすることがありません。当然カラダも心もふさぎ込んでいきます。施策として、体育館に避難している方々に、学校の花壇の世話をお願いしたそうです。

避難している人に花壇の世話をお願いした

はたから聞くと、なに生産性もないことをやらせて、ゆっくり体育館で休んでもらえばいのにと思います。しかし、この世話をやってもらうことにより、自分を必要にされていると思い、動かす機会もなかったカラダを人のために動かすことができるのです。実際に数字として、改善が見られたと報告されています。寝たきりや介護を予防するのになにが一番大切かというと、カラダを動かすに限ります。これは単に、運動するというだけでなく

「居場所」と「役割」が「活動」と「参加」に繋がる

体育館でじっと休んでいるだけでは、「居場所」もないし「役割」もない。 「活動」もしなければ、コミュニティへの「参加」も行えないのです。 避難にしている方に、避難している小学校の花壇の手入れを任せた、これが幸をそうして健康状態を維持するのに役にたったのです。

介護の二次予防に関して

厚生労働省では介護認定を受けそうな方を事前に健康診断でチェックして、介護予防の施策をおこなっていました。軽度の介護者の原因疾患の約半数は、カラダを動かさないことによる身体の能力低下です。そこで要介護になりやすい人へ、パワーリハビリといわれる筋力トレーニングをさせるのです。介護の二次予防事業。例えるならば

「高齢者向けライザップ」

なんだそうですが、これが実にうまくいっていない。実際に介護認定に近い高齢者に筋力をつけてもらうのですが、このプログラムがある程度終わったらそれ以上続かないそうです。ライザップの人もそうなんですかね〜?

プログラムが長続きしない

「辞めると介護認定になるような状況ですよ!」「みなさんハイリスクですよ!」と言われても続かない。学校の勉強も「勉強しないといい学校行けないよ!」と人から言われたら続きませんよね、年をとっても同じで続かないんですね。実に人間らしい。実際の数字でいうと介護のハイリスの人が1割いるのに対して、続けてリハビリを行う人は1%しか参加しないそうです。

1%しか続かない

これを厚生労働省が推進してプログラムを行っていたのですが、二次予防事業はムダだった。民間でやったとしたら破産的な壊滅的な失敗施策。このプログラムを受けるべきハイリスクな介護になりそうな人を見つけ出す・割り出す作業に、総予算の3分の1ないし4分の1のお金を使っていました。費用をつぎ込むということは、それだけ二次予防認定するための参加する人を探す作業にマンパワーがさかれたのです。こんな壊滅的な事業のために、厳しい労働環境の介護の世界で頑張ってくれる貴重な人材の時間と労力がムダに使われてしまいました。

失敗したら修正する。失敗はみとめて改善せよ!

なにが問題だったのか?それは途中で続かなくなってくるというのが問題で

「暮らしに根ざしたものになっているか?」

「特別なことになっていないか?」

介護の二次予防のためとはいえ、暮らしと密着したものでなくてはならいないし、そのプログラムが特別なことであってはならない。そうしないと続かないのです。

また、なぜか話しが急に飛びます。

私の友人が「農業と福祉を組み合わせた施策について」著作していたので、「農福連携」が今のトレンドになりつつあるのを知っていました。福本さんは、その「農福連携」の生産者として3つの団体をあげました。

ココファームワイナリー(栃木)

障がい者の人が働くワイナリーで、この手の団体としては古くからあり、生産するワインが高い評価を受けています。 http://cocowine.com

恋する豚研究所(千葉)

こちらは、絶品のハムを障がい者たちがつくっている。だいたい「恋する豚研究所」っていうネーミングセンスはなかなかのものですよね。生産物にクリエイティブあふれるネーミング、またデザイン性ゆたかなパッケージがブランド化に不可欠というトレンドも見逃すわけには行きません。さらに生産物は市場にマッチして、市場の他の流通品に負けない高品質のものを、適正な値段で作っているということが一番大切です。障がい者が作ったから、安かろう、悪かろうでは続かないのです。あ、ここで「持続性」というワードが出てきましたね。 https://www.koisurubuta.com/index.html

スワンベーカリー(各地で展開)

障がい者がつくっているが、障がい者にも適正な賃金払えるもの作る。 「ていねいに暮せば健常者も障がい者も高齢者も関係ない」 というのは、ハードルをあげて暮らす。「障がい者だから、低品質なものでもいいだろ〜」ではダメなんです。消費者がなっとくするものでなくては、また次に買ってくれません。 http://www.swanbakery.co.jp   重要なキーワードが出ました

「ていねいに」

話しが、高齢者の運動(介護の二次予防)に戻ります。介護状態にならないためには、持続的に運動をする必要があります。持続的にするたには「人間が主体的に活動する」必要がある。

「主体的に」

主体的に参加するために必要な要素は・・・

お金をかけない

お金がかかると、みんなやらなくなりますよね。同じお金つかうなら美味しいものを食べるか、孫にプレゼントするか他のことに使いたいです。そして

みんなでやる

一人では、なかなか続かないです。自分も友達が塾に通ってるから自分も行こうって思い、いやいや塾も行くことができました。「隣の●●さんが、運動しているから、自分もやってみよう」になるのです。

参加するための障壁が低ければ低いほど、参加者は増えます

元気な人でないとできない運動では、参加者の数が伸びずに「みんなでやる」にはならないでしょう。参加するための壁を低くして、

行える人は行う!
元気な人はやる!
運動能力が低く支援が必要な人でもやる!
さらに認知症の人も参加できるものを!

ここんところ車の運転で事故をおこす認知症の人々の話題が上がっていますが、こういう運動の広がりがあれば防げるような気もします。みんなが集まって運動なんかしていたら「●●さん、運転はしちゃダメよ!」なんて会話も自然と生まれるはずです。 そのような場を作るためには、住民参加による運営による自律的な拡大を目指せるプランが必要です。そして、

重要なのは口コミ!!

「●●さんが運動やりはじめたら、寝たきりから起きれるようになったわよ」なんて口コミが広がれば、みんな私も私もとこぞって参加してくるでしょう。広がりはじめさえすれば

「生き生きとした、持続可能で、健康的な地域」

がもうそこまで来ているような気ばします。 ちなみに、 高知県の「いきいき100歳体操」がオススメだそうです。熱海の湯楽YOU楽(ゆらゆら)体操については、言及されていませんでした。福本さんが何度も言ってましたが

「みんなが一緒にできること、簡単なことが重要」です!

ただしここで問題点が

誰でもできる。どこでもできる。いつでもできる。 これは「マネタイズしずらい・・・」

ビジネスにしずらいんですね。そうなると厚生労働省も渋い顔するかもしれませんね。費用が発生しないと、利権は発生しませんからね。 で、高齢者の介護予防の運動について大事なこと

介護予防のためにやるのではなく
残りの人生を、いきいきに生きるためにやるのである

「他者と生き生き暮らすことが、健康に暮らすことになるのか?」 人と交流を持たない人ほど、健康でなくなる。だから

生き生きと交流し活動する地域を取り戻そう

決して健康な人達が多いわけでない熱海。観光地でもあり、人の流れがある街だからこそできる生き生きとした交流が、持続可能な地域を作ってくれるのではないでしょうか。 福本さんが参考図書でいくつかあげていたが、中でも面白いとイチオシしていたのがこちらの本「ヤン・ゲール 人間の街 公共空間のデザイン」チェックしてみたいと思います。

スポンサーリンク
レクタングル(大)